第96回京都管理会計研究会

 京都大学経営管理大学院・経済学研究科は,令和4年11月19日オンラインにて第96回京都管理会計研究会を開催しました。本研究会は,研究者・実務家・院生を対象に管理会計研究の最先端の研究成果について知見を共有することを目的にしています。

 当日は, 市原 勇一氏(北九州市立大学准教授),黒木 淳氏(横浜市立大学准教授)及び尻無濱 芳崇氏(神奈川大学准教授)より「臨床会計調査の展開と展望」と題し, 臨床会計学の調査によって得られた知見を説明し,今後の研究計画について議論しました。

 臨床会計学とは,個別の企業事例にあらわれた変化や状態を分類する枠組みとなる知識を「臨床知」と定義し,管理会計の臨床知を会計士などの会計専門家から収集することを通じて,臨床知の体系化をめざす学問です。より具体的には,臨床家(会計専門家)が会計技法を実務適用する際に役立つ知識を提供する学問です。

 報告では,これまでの臨床会計学の知見によって明らかとなったことを説明しました。具体的には,利益率の高さと経営者の管理会計能力の高さには正の有意な関係があるなど財務業績と経営者の管理会計能力の関係,経営者のアスピレーション(野心)がない場合は管理会計の実践度合には負の影響があること,製造業とサービス業で管理会計実践度の財務業績への影響の相違,並びに会計専門家の経営アドバイスは企業の管理会計実践度の向上に寄与することなどを説明しました。

 また今後の調査の展望として,被説明変数,業種選択及び特定の状況にある企業群に関する検討,並びにパネル調査を実施することでさらに精緻な調査・分析が行なえる可能性がある旨指摘しました。

 参加した約30名の研究者・院生や実務家などと講演者との間で活発に議論が交わされ,盛会のうちに終了しました。

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