第94回京都管理会計研究会

 京都大学経営管理大学院・経済学研究科は,令和4年7月9日オンラインにて第94回京都管理会計研究会を開催しました。本研究会は,研究者・実務家・院生を対象に管理会計研究の最先端の研究成果について知見を共有することを目的にしております。

 当日は, 曹 昕怡氏(京都大学経済学研究科博士課程)より「管理者報酬における相対業績評価に関する実証分析-中国上場企業を対象に」と題し,管理者報酬における相対業績評価(Relative Performance Evaluation,以下「RPE」という。)の使用について中国上場企業を対象とした研究の報告がなされました。RPEとは,他者の業績と比較した相対的な業績によって評価される仕組みのことです。

 報告では,既存の先行研究は,株主の利益を最大化することを目的としたエージェンシー理論に基づく研究がほとんどであり,政治的要因を組み込んだ先行研究が少ないことを指摘しました。そのうえで,本研究は政治的要因を加味したRPEの分析を行うことによって,政治的要因のような管理者がコントロールできない要因を評価から排除するための報酬決定方法としてRPEを提示し,実証的にその効果を研究しました。

 本研究は,中国の国有企業のような業界平均と比べて必要以上の従業員を雇用している状態を「過剰就業」と定義し,過剰就業の水準が高い企業は、同水準が低い企業よりも政治要因の影響を受けやすいとの理論を基にしています。さらに本研究では,中国の民間企業のうち過剰就業の水準が高い企業もまた政治的要因の影響を受けているものとみなし,これらの民間企業を国有企業のRPEにおける比較対象の企業群として実証的に分析しました。その結果,RPEが管理者にとってコントロールできない政治的要因を国有企業における管理者報酬の決定方法から除外できることを示し,国有企業がRPEを導入することの有用性を示しました。

 参加した約35名の研究者・院生や実務家などと講演者との間で活発に議論が交わされ,盛会のうちに終了しました。

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