第99回京都管理会計研究会

 京都大学経営管理大学院・経済学研究科は,令和5年10月14日に京都大学吉田キャンパスにて第99回京都管理会計研究会を開催し、会場をZoomで中継するハイブリッド開催としました。本研究会は、研究者・実務家・院生を対象に管理会計研究の最先端の研究成果について知見を共有することを目的にしています。

 当日は、庄司豊氏(琉球大学国際地域創造学部講師)より「マネジメントコントロールと組織アンラーニング」と題して報告し、出席者と議論しました。アンラーニングとは、組織がもはや機能しなくなったものを意識的に捨て去るプロセスです。

 管理会計の主要な研究テーマの一つであるマネジメントコントロールのうち、予め設定した標準的な業績水準と実際の業績の乖離を修正する仕組みにサイバネティックコントロールがあります。報告では、サイバネティックコントロールは、標準化を促進する手法であるため、特定のルーティンを繰り返すことで、かかるルーティンが強く組織に埋め込まれてアンラーニングが困難になることを説明しました。一方で、ルーティンの埋め込まれることを避ければアンラーニングが可能となり、事業環境の変化に対して試行錯誤的に対処することができるようになることも指摘しました。

 また、マネジメントコントロールのうち、トップ・マネジャーが各階層のマネジャーと議論することで既存の戦略を修正する仕組みをインタラクティブコントロールシステムと呼びます。インタラクティブコントロールシステムでは組織学習を促進しつつ、組織の構成員と組織のアンラーニングを適切に関連付ける仕組みであることを説明しました。さらにイネーブリングコントロールと呼ばれる、組織構成員の知見や能力を活用して業務ルーティンを改良する仕組みについて、組織の構成員の個人レベルで業務ルーティンをアンラーニングする仕組みとして解釈できる可能性を指摘しました。

 最後にアンラーニングとフィードバックの関係についてのコンピューター・シミュレーション結果を紹介しました。フィードバックとは、物理的なプロセスからのアウトプットと環境の情報を意思決定に用いることです。シミュレーション結果から、フィードバックを適切に機能させるためにはアンラーニングは必要だが、常にアンラーニングを引き起こす必要はないこと、さらに環境変化が大きいときにはフィードバックにアンラーニングを伴わせる必要があることを示しました。

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