第97回京都管理会計研究会

 京都大学経営管理大学院・経済学研究科は,令和5年1月21日に第97回京都管理会計研究会を開催し,会場をZoomで中継するハイブリッド開催としました。本研究会は,研究者・実務家・院生を対象に管理会計研究の最先端の研究成果について知見を共有することを目的にしています。

 当日は, 松木 智子氏(帝塚山大学 教授)より「報告テーマ1: Cultural capital and management control system stability and  change in the subsidiary of a multinational enterprise」及び「報告テーマ2: “Mediating relations between financial and operational concerns when structural interdependencies are significant: The development of pseudo micro-profit centres at Kitanihon”ができるまで」と題して2つのテーマで報告し,その後議論しました。

 報告テーマ1では日本の多国籍企業の米国子会社におけるコントロール・パッケージがどのように変化したかを「文化資本」の概念を使って検証した研究を報告しました。コントロール・パッケージは経営管理の要素の組合せのことです。文化資本とは,企業文化や暗黙知の理解のような企業にとっての制約であると同時に,成功を決定する要素です。報告では,日本人駐在員に適用されるコントロール・パッケージは,海外子会社に適用する際に現地で異なる解釈がなされ受け入れられることを説明しました。さらに日本人駐在員は現地駐在員の方が日本人駐在員よりも現地に詳しいと考えているにもかかわらず,日本人駐在員がマネジャーとなっているという矛盾を認識し始めたときに,コントロール・パッケージが変わり始めたことを説明しました。そしてこれらの変化に時間を要した原因として「文化資本」が影響していることを指摘しました。

 報告テーマ2では,報告者が共同執筆した論文が,管理会計の国際学術誌であるManagement Accounting Researchに採用されるまでの経緯を報告しました。国際学術誌の審査員から論文に対して付された意見への対応方法や国際的な共同研究の進め方について具体的な事例を交えて説明しました。

 参加した約15名の研究者・院生や実務家などと講演者との間で活発に議論が交わされ,盛会のうちに終了しました。

講演する松木氏

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