第102回京都管理会計研究会

 京都大学経営管理大学院・経済学研究科は,令和6年3月13日に第102回京都管理会計研究会を総合研究2号館にて第102回京都管理会計研究会を開催し、会場をZoomで中継するハイブリッド開催としました。本研究会は、研究者・実務家・院生を対象に管理会計研究の最先端の研究成果について知見を共有することを目的にしています。

 当日は、David Derichs 氏(Senior University Lecturer, Aalto University)より「How non-managerial employees navigate tensions: Insights from an ‘agile’ bank」と題して報告し、出席者と議論しました。

 報告では、従業員の行動を規定する規則、業務慣行及び価値観などを含めた経営管理の仕組みであるマネジメント・コントロール(以下「MC」という。)の要素の組合せから生じる緊張関係をどのように扱うかをテーマとしました。報告において、緊張関係とは、例えば柔軟性と効率性のように双方を追求するとどちらかが損なわれてしまうような関係として定義しました。MCの先行研究の多くがマネジャーを対象としている中、従業員をはじめとする非マネジャーに着目して金融機関へのインタビュー及び内部文書の分析結果を基に説明しました。

 従業員にある程度の自律性を与えるエンパワーメントが実践されている北欧の金融機関では、顧客中心主義、変化への即応、自律及び業務の透明化のような指針を掲げています。かつてソフトウェア産業で実施された変化に素早く反応して業務を改善する「アジャイル」という概念の特徴が、上記の金融機関の指針にも見られることから、報告ではかかる金融機関の指針を「アジャイル指針」として紹介しました。

 また、報告では、これらの定性研究の結果から、金融機関における厳格な規制と職員の自律性、既存の会計システムと柔軟な計画性、並びにチームの業務と個人の評価という3つの緊張関係を紹介しました。これらの緊張関係を緩和するにあたりMCの要素がそれぞれ役割を果たしていることを発見したとともに、従来の研究の中心がマネジャーを対象にしたものだったのが、従業員も役割を果たしていることを指摘しました。

 参加した約15名の研究者・院生や実務家などと講演者との間で活発に議論が交わされ、盛会のうちに終了しました。

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