第101回京都管理会計研究会

 京都大学経営管理大学院・経済学研究科は,令和6年2月20日に第101回京都管理会計研究会をオンラインによるZoomで開催しました。本研究会は、研究者・実務家・院生を対象に管理会計研究の最先端の研究成果について知見を共有することを目的にしています。

 当日は、Christopher Akroyd 氏(Professor, Department of Accounting and Information Systems, University of Canterbury)より「 Improvisation and the temporal structures of performance measurement in a dynamic environment」と題して報告し、出席者と議論しました。

 報告では、即興理論(improvisation theory)を用いて、経営管理システム内の複数の業績測定システム(Performance Measurement Systems (以下「PMS」という。))の時間構造が、ダイナミックな環境下で活動する企業の目標達成にどのように影響するかについて説明しました。管理会計における従来の先行研究が「静的」な研究アプローチが中心である中、会計研究における時間構造の理解をより可視化する必要があることを主張しました。

 即興理論は、clock-time(時計に基づく時間)とevent-time(イベントに基づく時間)を組み合わせることで組織構成員の活動が調整されるというものです。clock-timeは、管理者の日々の締切や勤務時間など時間的な構造に従っている概念であるのに対して、event-timeは組織内部及び/又は外部の変化や出来事に対応するための時間概念です。組織内の事業活動を継続しつつ、市場のような組織外部の事象に柔軟に対応できるようにする即興理論では、clock-timeとevent-timeを同じコインの表裏と見なしています。

 報告では、日本の製造業への半構造化インタビューの結果を基に、マーケティング部門のパフォーマンスを評価するための予算に係るPMSと、製品開発部門のパフォーマンスを評価するための進捗に係るロードマップをPMSとして使用した事例を紹介しました。両部門は互いに依存していたものの、複数の業績測定システムに対して責任を負っていました。報告では即興理論を用いることで、両部門ではパフォーマンス測定において予期せぬ外発的事象を効果的に管理(event-time管理)し、期限を達成(clock-time管理)して、目標達成を可能にしたことを説明しました。

 参加した約20名の研究者・院生や実務家などと講演者との間で活発に議論が交わされ、盛会のうちに終了しました。

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