京都大学経営管理大学院・経済学研究科は、令和7年12月20日に第117回京都管理会計研究会を総合研究2号館にて開催し、会場をZOOMで中継するハイブリッド開催としました。本研究会は、研究者・実務家・院生を対象に管理会計研究の最先端の研究成果について知見を共有することを目的にしています。
当日は、柊紫乃氏(愛知工業大学)より、「ジャスト・イン・タイム損益計算の意義と活用に関する探索的研究―武州工業株式会社の実践を事例として―」と題して報告し、出席者と議論しました。
本報告では、生産現場の改善成果を会計的に測定・記録する「現場改善会計論(Gemba Kaizen Costing: GKC)」の実務適用における課題が提示されました。従来の標準原価による統制ではなく、実際原価計算を基本として改善の結果をリアルタイムに測定し、現場へ「会計による支援」を提供することの重要性が論じられました。特に、改善によって創出された余剰生産能力(Free Capacity)を機会損失として会計的に表現する理論構築が大きな焦点となりました。
この理論を具体化する試みとして、柊氏らは「ジャスト・イン・タイム損益計算書(Just-in-Time Profit and Loss Statement: JIT PL)」の構想を提案しました。これは、従来の月次決算による約2ヶ月のタイムラグを解消し、「必要な時に、必要な損益情報を見る」ことを可能にするシステムです。
報告では、武州工業株式会社におけるシステム構築の要件として、三段階のデータプロセッシングの重要性が提示されました。具体的には、社内データを自動収集して人的負荷を抑えるバックエンド、コード形式の採用によりシステム負荷を軽減するサーバー保存、そしてユーザーの要求に応じて情報を可視化するフロントエンドを連携させています。これにより、リソース制約下にある中小企業においても、負荷を抑えつつ迅速な情報提供を可能にするバーチャル統合システムが構築できることが示されました。
最後に、本研究は管理会計DXの条件を「情報の活用タイミングや目的の変革」へと拡張するものであり、リソース制約の強い中小企業においても有効な経営管理モデルになり得ると結びました。
参加した研究者・院生や実務家などと講演者との間で活発な議論が交わされ、盛会のうちに終了しました。
